【0221】「ぼくらなら」表紙画像



「私が望んだことだから」

 冴え冴えと空気の澄んだ暗い夜、リカはそう言って、わたしについて行く道を選んだ。
 それが正しい選択なのか、わたしは保証できない。
 だけど嬉しくて、

「今日からはずっと一緒だね」

 と、またも保証できないことを言ってしまった。

「まずは電車に乗って、バスセンターまで行こう。
 それから夜行バスで、知らない街を目指すの」
「それから?」

 わたしの目元には大きな痣があり、足には歩くのもつらいほどの深い傷があるが、リカの身体には何の問題もない。
 わたしはこの街を今すぐにでも出なければならない理由があるが、リカにそういったものはない。
 なのにリカは、わたしについて行くという。
 まるで、そうする以外の選択肢などないかのように。

「それから……」

『それから』とは言ったものの、計画に続きはない。
 わたしは今朝リカに『家出をする』と伝えたが、具体的にどこへ行くかは考えていなかった。
 なぜならわたしは『家出をする』と嘘をついて、リカの知らない場所で命を絶つつもりだったのだ。

「考えていないんでしょう。
 あなたって、ちょっと抜けたところがあるから」

 言いよどむわたしを見て、リカが笑った。

「だから代わりに考えてきた。
 まず、行き先はここにしましょう」

 ガイドブックを広げ、明確な目的地を指差す。

「生きましょう。
 私たち、そのためにここを一緒に出るの」

 まるで、わたしを一人で行かせたらどうなるか、すでに把握しているみたいに。

「これから行く先に、私たちの望む未来がある。
 だから……」

 リカが真剣に、懇願するような口調で言う。
 わたしの望む未来。
 それは平和で温かい、安心して眠れる暮らしだ。
 だけどわたしは、一人ではあまりにも弱く、それを諦めようとしていた。
 でも、二人なら。
 もしかしたら、手を伸ばせば、案外あっさり、掴めるのかもしれない。
 リカはそれを信じて、今ここにいてくれるのだ。

「だから、長生きしてね」

 泣きそうな笑顔を向けるリカに、わたしは何度も頷く。
 それからゆっくり、駅への道を一緒に歩いていった。
「ありがとう」




■本作は「ガレットONLINE」にも掲載していただいています。ページ右上ハートのボタンで会員登録等なしで応援できます。よかったらよろしくお願いします!

■表紙素材:香久 様

■お題:「フリーワンライ」第130回より

pixivでオリジナル小説の投稿始めました
ぜひご覧になってください!

■新作「あしたのモニカ」もあわせてよろしくお願いします 💕

【1218】サイズダウン版ジャケットイラスト