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カテゴリ: 東條 紗雪(とうじょう さゆき)

少女001

【イラスト:Hiromu】


◆第1弾はこちら
◆第2弾はこちら



 秋のある日は交通事故に遭って、少し入院することになってしまった。


 怪我自体は大したことはなく、入院はちょっと大げさに思えた。
 だけどこの数日間は、結果的に、わたしにとってとても大切なものになった。
 友人の東條 紗雪(とうじょう さゆき)との関係含め、色々なものに少し前向きになれたからだ。


「よかった。思ったより元気そうだね」


 一週間ぶりに会った紗雪は、ベッドに寝ているわたしを見たとたん大きく息をつき、ホッとした顔になった。
 それを見て、わたしも同じ表情になる。
 友達がお見舞いに来てくれるというのは、こんなにも嬉しいものであったか。


「……あの。わたし、来ていてだいじょうぶ?
 これから、会社の方が来られたりしない?」
「ああ。大丈夫だよ。
 昨日、みなさんでお見えになられたけど……。
 入院といってもこの通り、そこまでひどくはないからね。
 わざわざ来てもらうのが申し訳ないくらいだし。
 『また来るね』って言ってくれる人もいたんだけど。
 『一回来てくださっただけで十分です』って、お断りした」
「たいしたことない……? そんなこと言わないで。
 確かに、結果だけ見ればそうかもしれないけど……。
 おねーさんの本音としては違うでしょう?」


 わたしの言葉に、紗雪の瞳が小さく揺れる。
 高校二年生の紗雪は、学校では『薄情で冷たい子』などと噂されているが、実際はこの通り、心優しく思いやりのある性格だ。
 ただ、感情が表に出にくく、自分の気持ちを伝えるのが苦手なだけなのである。
 だけどわたしは紗雪のこの一言に、どれだけの気持ちが詰まっているかよくわかる。
 思わずほろりと泣いてしまいそうになった。
 わたしの方がはるかに年上で、社会人であるにもかかわらず、だ。


「ありがとう。紗雪のおっしゃる通り。
 ……わたしの本音としてはね。死ぬかと思った。
 本当に怖かった。
 生きていて本当に良かったよ」
「ほら! 無理しないで。
 会社の人にならともかく、私の前で嘘つくことなんてない」 


 事故に遭ったとき感じたのは『わたしの人生は、ここで終わりなのだろうか』という恐怖だった。


 わたしという人間はごく平凡、いや、平凡以下くらいの二十代のOLで、地元を基準に考えたとき『まあ、そこそこだね』という学校に入り卒業し、『まあ、こんなところだよね』という企業に就職し、実家からそこが少し遠かったという理由で、一人暮らしをして生きている。
 かといって地位は安定しているかというと、そうではない。
 『来年の自分がどうなっているかわからない』という漠然とした恐怖は常にあり、今何者にもなれていない自分は、今後も何者にもなれないだろうという、うっすらとした諦念がいつもある。

 結果『若者の貧困』という言葉にも『高齢者の不安』という言葉にも同じくらい当事者意識を感じて己の未来を憂いては悲しくなり、だけどリスクを恐れる性格から『宝くじを当てて一発逆転なんてありもしない夢を見るくらいなら、くじを買うのと同等の額を貯金しておこう』と考え、日々をとにかく地味に生きているタイプである。


 そんなわたしは、親しい人も非常に少ない。
 恋人はもちろんおらず、友達さえごく少数で、紗雪に出会うまでは、休日一緒に遊ぶ相手はゼロだったのである。
 しかもわたしは、もともと人づきあいが苦手だとか、一人で生きていきたいと願っているとか、突然新しい環境に放り込まれ友人作りに失敗したというタイプでもなかった。
 人並みには、人とのかかわりを求めて生きてきた。
 なので、ある地点までは、そこそこ友人がいた。
 だから自分は、人並みに友達がいる人間だと思っていたはずなのに。
 気づいたら、孤独になってしまっていた。


 つまり、自分には人として何かが欠けている。
 何か問題があるので、ひとりぼっちになってしまったのだ。
 そもそも、その理由がなんなのかきちんと理解していないので、このありさまなのだ……。
 と思っていたのである。


 ゆえにわたしは、事故に遭ったとき、自分はあまりにも何もしていない。何も手に入れていない。ここで終わるのはあんまりだ……。と、強く思った。

 何も持っていない人生だから、執着する要素もない。突然消えるように死んでしまえたなら、それはむしろラッキーだ。
 以前はそう思うことさえあったのに、いざとなるとわたしは『終わり』を拒否し、明日が続くことを望んだのである。
 

 そして今に至る。
 これだけ大げさなことを考えたわたしは『この程度では、まず終わらない』という痛みしか負わず、事故を起こした方も至極まっとうな方だったので、すべては粛々と、こんなにも早いのかというスピードで、納得のいく形で片付いた。
 あとは怪我を治して復帰するだけ。
 その前に、もしこんなわたしの顔が見たい人がいるのでしたら、ぜひいらしてください……。という状態だったのだ。


「紗雪。もうバレバレだと思うから素直に言うね。
 入院するって決まったとき、実は怖かったんだ」
「怖かった? ……ああ、わかる。
 私もきっと、おねーさんと同じことを考える。
 それは入院費とか、しばらく会社や学校を休まなきゃいけないってことよりも……」
「ご名答。入院してる間、誰もお見舞いに来てくれないんじゃないかっておびえていたの。
 せいぜい親が来て終わりなんじゃないかな、ってね。
 だから今、紗雪が来てくれて嬉しい」
「……もう。
 そりゃあ、来るよ。約束していたんだから……。
 おねーさん、無理するのやめたら、急に正直だね」


 そう。わたしは嬉しかったのだ。自分をおびえさせた『入院中を孤独に過ごす』という予想が外れたことが。
 しかも、来てくれたのは、紗雪だけじゃない。
 会社の人たちのお見舞いも、思った以上に心にしみたのである。
 わたしは、社内に特に親しい人がいるわけではない。
 だから実際のところは、お見舞いに来るのが億劫な人もいただろう。
 果たして自分が行く理由はあるのだろうか? と思った人もいただろう。
 だけどわたしは、相手がどう思って行動したのかよりも、自分自身がどう感じたかを大切にしたいと思ったのだ。
 なぜなら――……。


「人生いつ終わるかわからないから、辛いときはともかく、嬉しいときは正直に言った方がいいんだなって、最近思うようになってさ。
 ……で、お願いした本持ってきてくれた?
 わたし、楽しみにしていたんだよ」
「……持ってきたけど。
 本当にこの本でよかったの?
 明らかに、入院中の人に渡すような本じゃないけど……」
「いいのいいの。こうなったから、改めて興味持てたんだし」
「おねーさんってそういう人だよね。
 まぁ、私も気になって、同じジャンルの本を借りたけど。
 ……まぁ、こういう本を借りておいてわたしが突然死んだら。 周りの人には『ああ、やっぱり……』って思われるのかもしれないけど……。
 ということで、はい。
 『終活』の本」
「そう。これが読みたかったのです」


 『終活』。
 今回わたしは、紗雪に来てもらう際、このジャンルの本を持ってきてもらうようお願いしていた。
 わたしは今回の事故で、実際はその確率がなかったとはいえ、少し死に触れた気がした。
 なので、知識を得ておきたいと思ったのである。
 これは、同じ部屋に誰かが入院しているならやめておくべき話題だが、今この四人部屋にはわたししかいない。なので、別に構わないだろう。


 終活とは、『自分の人生の終わりに向けた活動』の略だ。
 端的に言えば、自分の死後の段取りを、生きているうちに決めて文章に残しておいたり、先に手続きを済ませたりしておくことである。

 たとえば、自分が亡くなった後、葬儀はどのように行うか。

 お墓は、すでにあるところへ入るのか。
 それとも、新たに用意するのか。
 あるいは、粉になった骨を海に撒いてしまうのか。

 財産があるなら、相続はどうするのか。
 ペットを飼っていたなら、誰に面倒を見てもらうのか。

 このような生前整理を、あらかじめして遺言として残し、必要なら生きているうちに業者に頼み、お金を支払っておくのだ。


 『終活』本では、死の瞬間を『人生のエンディング』と呼ぶことが多い。
 そう聞くと、急に死は前向きなものに思える。
 なぜなら、たとえばゲームなら、エンディングは積極的に目指すものの一つだからだ。
 死が『突然、仕方なく迎えるもの』から『徐々に、前向きに目指すもの』になれば、生きることにも前向きになれる。
 また、突然のことにもおびえないよう、あらかじめ備えておくことができる。
 多くの『終活』本は、そういったねらいで書かれているのだと思う。


 ……であれば、もっと手に取りやすく、買いやすくなってほしい。
 まだ人生というゲームの序盤である、若い人こそ、こういう本を積極的に手に取れるような雰囲気にしてほしい……。
 と思うのだが、残念ながら、なかなかそうはいかない。
 若い人向けの『終活』本はまだ少し貴重で、少なくともわたしは見かけたことがない。

 よって、今わたしと紗雪が持つ本も、年配の方向けである。
 紗雪はこの本を図書館のカウンターへ持っていくのに、さぞ勇気を必要としたことだろう。


「そうだ。200万円だって」
「えっ? 今日持ってきてもらった本の値段?」
「ううん。終活の話。
 自宅で孤独死して、二週間くらい発見されなかったら。
 もろもろの処理に、そのくらいのお金がかかるってこの本に書いてあったの。
 用意しておかないとね」
「それは知らなかった。
 ひえー……。そんなにするんだ……」


 紗雪から告げられる事実に、心がひやっとする。
 正直なところ、その十分の一くらいの額だと思っていたからだ。
 死ぬのにもそんなにお金がかかるなんて、人間社会は、つくづく孤独に冷たい……と思いかけたが、そんな単純な話ではないことは、わたしにもわかる。
 紗雪は続けた。


「読んでいて、200万円は、みんなが用意しておくべきお金なんだなって思った。
 生前人に囲まれていた人でも、孤独死することはあるから」
「あ……」
「この本にもね。毎日すごく忙しい、充実してる人が突然亡くなって。
 だけどご家族やお友達は、最近連絡がつかなくても『どこかに旅行でも行っているのかな』とか……。
 あるいは『仕事が忙しいのかな』って捉えたために、発見が遅れたパターンが載っていたの。
 前者は、定年退職されていたり、求職中で、職場っていう、つながりがなかった方。
 後者は、すごく忙しくしていたところ、突然体調を崩して亡くなった方に多いって。
 つまり、孤独死って、すごく身近なんだなって」
「一人で暮らしている人は、誰でも孤独死する可能性があって……。
 それは周囲との関係が希薄だとか、その人の人間性に問題があるかとかは関係ないってことだよね」
「うん。それを知ったら、孤独死は何もおかしなことじゃなくて、可能性として普通にあることなんだなって思えた。
 孤独であることは恥ずかしいことじゃなくて……だけど準備は必要なものなんだって思えた」


 紗雪はそこまで言うと、手に持っていたままの本をこちらに見せて、少し真面目な顔になった。
 まるで、今日はこれを伝えに来たのだと言うように。


「……だからね。私も、すごく興味を持ったから。
 これから、一緒に準備しようよ。
 今回の件で思ったけど、いつ私とおねーさんも離れ離れになるかわからない。
 このまま健康に生きていた場合だって……。
 たとえばおねーさんは結婚して別の地域に引っ越すかもしれないし、私も地元じゃない大学に進学するかもしれない。
 だから、今みたいに、ずっとそばで暮らすことは難しいかもしれないけど……。
 一緒に勉強したことはずっと残るでしょう?
 私はそうやって、この関係を未来につなげたいって、この本を読みながら思ったの。
 ……いかが、でしょうか?」


 わたしと紗雪は、お互いに友人がおらず、時間を持て余して図書館に入り浸っていたことで知り合った。
 そんなわたしたちは、孤独がいかに身近なものか知っている。 どんなに良い関係でも突然終わってしまうことはあり、お互いに非はないと思える場合でも、切れてしまうつながりがあることを知っている。
 だからこそ、紗雪は提案してくれたのだ。
 この先何が起きてもいいように『一緒に、一人で生きていける方法を探そう』と言ってくれているのだ。


「いいね。賛成! こちらこそ、ぜひお願いします。
 ……でもわたし、結婚できる気がしないんだよなぁ」
「だったらなお準備しなきゃ!
 そういう人、今はすごく多いから、同じ境遇のお友達ができたときもサポートしてあげられるし。
 最後はみんな、一人かも知れないけど……。
 その対策は、誰かと一緒にできると思うから」
「紗雪の言うとおりだね。……でも」
「うん?」


 ならばわたしも、紗雪に伝えたいことがあった。
 わたしと紗雪が一緒に死ぬことはおそらく不可能だが、別々に死んでしまったとき、残った方がその生を証明することはできる。
 たとえば……。


「もし、突然紗雪に何かあったとしても。
 『ああ、やっぱり……』って思われることはないよ。
 わたしがいるから。
 紗雪がどういう人だったか、わたしが説明するから。
 まだこんなに若いのに死について真剣に考えちゃう真面目な人だったって、わたしが伝えるから」
「おねーさん……」


 人と人の関係は儚い。
 今日一緒にいた人と、明日も一緒にいられるとは限らない。
 だから不安になるが、わたしは紗雪との関係を信じたい。
 はたから見れば不思議な二人だが、確かにわたしたちは友達だ。
 であればいっしょに過ごせる限りある時間を、できるだけ前向きに使いたい。
 

「ありがとう……。
 じゃあ、私も同じように説明してあげるね。
 『おねーさんはこの通り、入院先の病院で終活の本を読んじゃう変わり者でしたが、それは前向きな思いがあってこそのものでした』って」
​「よろしくぅ」
「ふふ。ひとまずは、早く怪我を治してね。
 退院したらこの前話した図書館のあるケーキ屋さん。一緒に行くんだから」
「うん……ありがとう」


 一緒にいるのに、孤独について語り合い、孤独死について真剣に学び合う。
 これこそいかにも変わり者の行動だが、わたしたちはそれでいいと思う。
 本を愛する孤独なふたりは、こうして今、今日とこれからについて話し合う仲間になった。
 もしそんなわたしたちの物語が本になるならば、最初の巻は、きっとこのような言葉で終わるのだ。


「では……まずは読書タイム、始めましょっか」



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少女001

【イラスト:Hiromu】




 夏のある日は、友人の東條 紗雪(とうじょう さゆき)と、最近オープンした大型書店へ出かけた。

 半年ほど前に知り合った紗雪は、現在わたしの、唯一といえる直接会って遊ぶ関係の友人だ。
 有名私立高校に通っている紗雪と、現在OLとして働くわたしは、自然に出会うには少し年が離れている。
 だけど大変な読書家である紗雪は、ある日小さな図書館にて、わたしという、当時暇を持て余し、読書に熱中していた人間と出会った。
 そして偶然にも本の好みが似ていたことにより、紗雪とわたしはやがて些細なきっかけから会話するようになる。それから時間をかけてゆっくりと、今の一緒に過ごす関係になったのであった。


「この前『孤独に生きていく方法』って本を読んだの」

 その日紗雪が書店へ向かう道で話し始めたのは、読破したばかりの本の話題であった。

 『孤独に生きていく方法』。
 そんなものがあるのか。
 たった一人の親しかった友達と疎遠になったわたしと、学校に友人がおらず、一人で過ごしている紗雪。
 現在不本意にも、大変孤独な生活を余儀なくされているわたしたちにとって、孤独といかに向き合うかというのは、大変切実な問題だ。
 だから二人とも、もしも有効な方法があるのなら、ぜひ知りたいと思っている。


「……どんなことが書いてあった?」

 思わず、たずねる声音が真剣なものになってしまう。
 しかし、紗雪の返答は、想像とはかなり違うものであった。

「『たった一人でいいから、この人は自分を裏切らない。絶対に理解してくれると思う人を見つけなさい』って書いてあった」
「……それ、一人で生きてるって言わないね?」
「私もそう思った。だからいやになって、読むの途中でやめちゃった」

 紗雪が肩を落とすのに合わせて、わたしも同じリアクションをしてしまう。
 自分を決して裏切らず、絶対に理解してくれると思う人。
 そんな存在はなかなか見つけるのが困難に思えるし、そもそも、そんなすばらしい人がいる人間は『孤独に生きていく方法』なんてタイトルの本を手に取るのだろうか。

「借りるの、結構恥ずかしかったのに……」

 疑問に思ったが、そうこぼす紗雪はかわいいので、まあいいか。と思ってしまう。
 紗雪の気持ちは大変わかる。
 いかにも『人生に悩んでいます』という感じの本を借りるのは恥ずかしい。
 自意識過剰とはわかっていても、司書さんに『自分は淋しい人間です』と教えているようで、悲しくなるのだ。

「参考になった部分がないわけじゃないんだけど……。
 でも『なにこれ?』って思うところもあって……。
 おねーさんも読んでみてほしい!
 ああでも、私はもう返しちゃったんだった……」
「じゃあ、これから行く店で探してみるよ。参考になりそうだったら買ってみる」
「そうして! きっとおねーさんも、私と同じ気持ちになると思うから」

 わたしたちがその日訪れたのは、海外の有名な書店を参考に作られた、吹き抜けのある大きなお店だった。
 少し前に、美しい内装の書店の写真を集めた本が流行したが、そういったところで紹介されそうな場所だ。
 店内にはいくつものカフェスペースがあり、しかもそこでは、購入前の本を持ち込んでもいいらしい。
 なのでわたしは紗雪としばらく物色したのち、宣言通り、噂の『孤独に生きていく方法』を読ませてもらうことにした。


 出会って半年も経つにもかかわらず、無邪気に友達というには年が離れすぎているわたしたちは、いまだに距離を測りかねている。
結果、再び自分が孤独になることを想定して暮らさずにはいられない。
 出会った頃に比べれば、会話はかなり弾む。
 金銭感覚も、お金持ちだけれど家が厳しくてお小遣いは最小限の紗雪と、平均以下のOLのわたしはぴったり合う。
 友人がいないせいで時間の融通もきくから、会うタイミングも合わせやすいし、はたから見れば、自分たちはなかなかに良い関係であると、客観的には思えているのだけれど……。
 どうしても、お互いに慎重になりすぎている。


「……混んでるね」
「ああ、あそこだけ空いてる。そこにしようか」

 わたしたちが選んだ奥のカフェスペースは、かなり混雑しているにもかかわらず、思ったよりも静かだった。
 もちろん雑談をしてもいいはずなのだが、ここだけまるで図書館のようにしーんとしており、なんだか話しにくい雰囲気になっている。
 しかもわたしたちは、唯一空いていたということで、ソファ席を選んでしまった。
 新しくてふかふかのソファは大変座り心地が良かったが、柔らかい背もたれによりかかると、必然的に距離ができる。
 結果的に、テーブル席に座って向かい合うよりも、わたしたちは顔が遠くなり、声をかけにくくなってしまったのであった。


 これは、悪手だ。
 
 さっきまで本の話や最近あったことの話をして、よどみなく会話が続いていたのに、今はなんだか話を始めづらい。
 わたしは正直なところ、これをとても残念に感じていた。
 せっかく紗雪と一緒にいるのに、これではおしゃべりができない。

 しかし、そう思ったところで周囲が急に話しやすい雰囲気になるわけでもない。
 わたしたちは仕方なく、無言で本を読み始めることとなり、わたしは紗雪が先ほど話してくれた『孤独に生きていく方法』を開くことにした。
 そこには先ほど紗雪が言った通りの主旨のことが書かれており、わたしは紗雪の落胆は想像にやすいと感じた。


 自分を裏切らない、絶対に自分を理解してくれると思う人。

 そう言われた時、わたしは、自分ではとても大切に想い、もしかしたらそういった存在になってくれるかもしれないと思っていたのに、気づくと消えてしまっていた縁のことを思い出す。

 前職の頃、毎月食事に行っていた友達。
 でも、相手が転勤したらあっさり連絡が途絶えてしまった。
 SNSで毎日のように話していた人。
仲がいいつもりだったけれど、ある日から突然投稿がなくなって、今ではどうしているのもわからない。
 そして残った、唯一と言っていい友達。
 ……には『忙しいから、今度連絡する』と言われて以来、もう半年以上が経ってしまった。


 どの人に対しても、わたしは自分なりにベストを尽くして関係を築いてきたつもりだ。
 にもかかわらず、気が付くとわたしは一人になってしまっていた。
 だから自分にはきっと、人として大切な何かが欠けているのだろうと感じている。
 ゆえにわたしは紗雪との関係にも自信が持てず、いつまでたっても距離を測りかね、自分の気持ちを伝えきれずにいるのだ。
 せっかく親しくなれたのだから、できればもう失敗したくはない。
 でも、どうすれば失敗せずに生きられるかはわからない。
 だから、動けずにいる。


 紗雪は不器用な子だが、それ以上に思いやりのある子だ。
 つんとした態度をとったかと思えば、すぐに不安げにこちらを振り向いて、不慣れな手つきで大切にしてくれる。
 今日も、誘ってくれたのは紗雪だ。
 図書館にもない珍しい本を探していたら

『ここになら置いてるかもしれないよ』

 と、教えてくれたのである。


 それだけではない。
 少し前、わたしが体調を崩した日に、紗雪がお見舞いに来てくれたことがある。

『今日は図書館に行けません。ごめんね』

 そう連絡した直後、おろおろと、おずおずとわたしの部屋のチャイムを押した紗雪は、身体によさそうなものがいろいろ入ったスーパーの袋を提げてやってきたくせに

『自分が食べたかったから買ってきただけ』

 と譲らなかった。
 だけど見るからに危なっかしい手つきで食事を作ってくれ、それでも一向に回復しないわたしを案じて、門限ギリギリまでわたしのそばにいてくれた。

 あの日の紗雪を思い出すと、わたしの心は温かくなる。
 まだ自分はそこまで孤独ではなかったと感じて、安心して眠ることができる。
 そして、そんな紗雪を『かわいいね』と言って抱きしめたいと思う。
 けれど、いつも拒絶されたらどうしようという気持ちが勝って、わたしはうまく行動できない。
 全く情けない話だ。
 わたしは紗雪よりもよっぽど年上なのに、この調子では、精神年齢という意味で紗雪の同等以下な気がしてくる。
 そんなことを考えながら一度本を置き、飲み物を飲もうと正面へ顔を向けると、紗雪が鞄の中をあさりながら『しまった』という顔をしていた。


 どうやら、羽織るものを忘れてきてしまったらしい。
 
 夏の室内はどこも冷房が効いていることが多く、それはこの店も例外ではない。
 にもかかわらず、今日の紗雪はノースリーブの服を着ている。
 これではとても寒いだろう。
 少なくとも、長時間読書するには向かない格好だ。
 なのでわたしは紗雪と同じように鞄を開けると、カーディガンを取り出して差し出してみる。
 すると紗雪は驚いた顔になり、そしてこう言った。


「……ありがとう……」

 だけどこれはわたしが特別親切だとか、心優しいというわけではない。
 単純に紗雪よりも長く生きているので、何事に対しても準備が良くなっているだけだ。
 わたしと同世代の女性なら、多くの人が似たような、あるいはこれ以上の気遣いを紗雪にするだろう。
 それでも紗雪は、たったこれだけのことで顔を赤らめ、恥ずかしそうに頭を下げる。
 わたしはそれが、とてもいとおしい。
 真面目に、誠実に生きているのに、いつまでたっても人に親切にされ慣れない紗雪に、もっといろんなことをして、喜ばせたいと思ってしまう。

 そして同時に、こんなことも思う。

 こんな姿を紗雪が他の誰かに見せることができたなら、友達なんてきっといくらでもできるだろう。
紗雪は学校では冷たい子だと思われているらしいが、実際に話してみて、紗雪の人柄に触れれば、必ず紗雪の理解者は現れるだろう。
 だけどその時わたしは、あっさり紗雪にとって必要のない存在になってしまうかもしれない……と。

 女子高生としては、年の離れたさえないOLと一緒にいるよりも、同世代の友達と過ごす方が、間違いなく正しいし、それこそがあるべき姿なのだろう。
そう理解している反面、わたしは想像しただけで淋しくなる。
 この関係が少しでも長く続けばいい。お互いに新たな友達ができなければ、わたしたちは、もうしばらくくらいは、このままでいられるのでは……と思ってしまうのだ。


 こんなことを考えている間にも紗雪はゆっくりとカーディガンを羽織る。
 そして、再び本に向き直るのだろう。と思っていると、紗雪はなぜか再び鞄を探り、今読んでいたのとは別の本を取り出して、口を開いた。


「……あの」

 紗雪が手に持って見せた本。
 それは前回会った時、わたしが勧めた本だった。

「これ、すごく面白かった……。だから、この話がしたい。
 落ち着ける場所についたら、ゆっくり喋ろうって思ってたんだけど……。
 でもここ、なんだか静かだから……」


 紗雪が次になんと言うのかは、人間関係に臆病で、後ろ向きなわたしにでももうわかった。
 二人とも、同じことを考えていた。
 そんなささやかなことが、今はとても嬉しいことに感じられる。


「飲み物買っちゃったけど……場所……変えたい。
 私が奢るから……」
「わたしもそう思ってた。
 大丈夫だよ。紗雪がお金ないのはわかっているから。割り勘にしましょうぞ」

 言いながらわたしはまだ少し残っているアイスコーヒーを手に取り、そのまま飲み干す。
 紗雪は奢るという提案を断られて

「……どうしてそんなこと言うの!」

 とぶすっとしているが、わたしとしては、わたしが奢っても構わないくらいだ。
 自分は自分、人は人、というスタンスの紗雪は、年上のわたしに対しても奢られるのを嫌い、徹底して割り勘を希望するが、今日くらいは許される気がする。

「あとあの、カーディガンは……」
「うん?」

 上機嫌で、二人分のコップを返却して振り向くと、さらに紗雪が申し訳なさそうに切り出す。
 右手でカーディガンの左袖を大切そうに握り、話す前から言いたいことを無言で主張している。

「もうちょっと借りたい……」
「どうぞどうぞ」

 わたしはそんな、紗雪がかわいい。
 だから

『たった一人でいいから、この人は自分を裏切らない。絶対に理解してくれると思う人を見つけなさい』

 なんて無茶なことを紗雪が言われた時、思い浮かぶ存在になれたらと、思ってしまうことはあるけれど……。
 今はこのくらいの距離がいいのだろう。
 わたしは頷くと、孤独に生きていく方法は載っていない感じでも、もう少し続きを読んでみたい気がするその本を持って、レジへ向かった。

「行きましょっか」

少女001

【イラスト:Hiromu】

 東條 紗雪(とうじょう さゆき)は周囲から薄情な子と噂されていたが、対するわたしは、周囲から分別のある女だと認識されていた。
 人が人に抱くイメージとは、曖昧で適当だ。
 多数の人間が一人の人間に対しておおむね同じ印象を抱くのなら『まぁ、きっとそれが真実なのだろう』という形で、あっという間に広まってしまう。
 だけど、今わたしの目の前に広がっている光景を見たら、少なくとも紗雪は薄情な子とは呼ばれなくなるだろう。
 たとえ本人が、あくまで自分は薄情であると主張しても、だ。


「ばかだね、おねーさん」


 今、わたしに向かって声をかけてくれているのが、噂の紗雪だ。
 言葉こそ呆れているようだが、声音は静かでやさしい。
 紗雪はベッドから起き上がれずにいるわたしのすぐ目の前まで来ると、ふふ。と笑って額と額をくっつける。

 ごく至近距離で、いとおしげにこちらを見つめたかと思うと、急にふいっと、飽きたみたいにその場を離れる。
 なのにそのくせ、また、とことこと戻って来て、すぐそばにしゃがみこむ。

 平日の午後四時。
 薄暗い部屋のカーテンの向こうでは、まだ夕焼けも始まっていない。
 普段なら、仕事をしている時間だ。


『体調を崩したので、今日は図書館に行けません。ごめんね』

 紗雪にそう連絡したのは、あくまで彼女にわたしを探させたり待たせたりしないためで、決してこうして看病して欲しかったからじゃない。
 だけど紗雪は今ここにいる。
 同級生たちから薄情と評され、自分自身もそれを認め、わたし自身まずここへは来ないだろうと思っていた紗雪は、今ここにいる。

「この前の本、読んだよ。おねーさん」

 ベッドをぴょんと覗き込むようにして、紗雪は低めのゆっくりした声で言う。

「どうだった?」
「ひどい話だった! 古典って、悲しくなる理不尽な話ばっかり」
「ねぇ? わたしもそう思う」

 紗雪はテレビでよく見る女優さんに少し似たとても可愛らしい顔立ちをしており、十七歳という年齢にしては落ち着いていて、そして、一見他を寄せ付けぬ、ひんやりした雰囲気をまとっている。
 でも、実際は歳相応に子どもっぽく、それ以上に常識的で親切な性格だ。
 紗雪は褒められるのを嫌がり、いつも良いことをした後、わざと素っ気なく振る舞う。
 今もそれだけ話したかと思えば、ぷいっと視線を逸らして、まるで関心がないようなふりをする。
 けれどそれは、人と深く関わることで傷つくのを恐れる、紗雪の臆病な心のあらわれだと、わたしはわかっている。

 そんな紗雪とは、半年前に図書館で知り合った。
 ある日の貸し出しカウンターで、わたしが返却しようと取り出した本が、ちょうど紗雪の探していたものだったのだ。

「あ」

 紗雪が発したその声は、結果として、女子高生とOLが知り合いになる珍しい展開を招いた。
 だけどその日はそれだけ。
 わたしは本を紗雪に渡し、事態を把握した司書さんは次の予約のないことを確認する。
 そしてそのまま本は紗雪に貸し出されるよう処理され、一連の流れが完了したところで、わたしたちは別れた。

 市内の有名私立に通う可愛い子と、近所の小さな図書館で一瞬だけ話した。
 わたしと紗雪の接触は、それでおしまい。
 そうだとばかり思っていたのに、実際はそうはならなかった。
 一回の遭遇が二回になったのはすぐで、二回が十回になるまでは、二ヶ月もかからなかった。

 わたしたちが懇意にする図書館は狭い。
 蔵書はささやかで、わたしは現地で本を選ぶことよりも、主に他の施設から取り寄せた予約本を受け取るのに利用していた。
 つまり、そんな小さな場所であまりにも何度も会うので、わたしと紗雪はそのうちお互いなんとなく無視できなくなる。
 さらに本の好みもなんだか似ているものだから、ある日わたしから

「その本の感想、よかったら聞かせてください」

 と声をかけたことで、とうとうわたしたちは本格的に知り合ったのだ。

「……いいですよ?」


 図書館で見かける時も、そうじゃない時も、紗雪はいつも一人だった。
 中学の頃、友達だと思っていた子たちにある日急に無視されるようになってから、特定の友人は作らず、他人そのものに対してもまるで期待しなければ、誰へも強い愛情を抱かないようにしているのだという。
 その気持ちは大変わかる。
 わたしも最近、唯一と言っていい友達と疎遠になって以来、すっかり孤独になってしまっていた。だから、図書館に来ていたのである。

 というと一見論理が飛躍しているようだけど、これはわたしなりになかなか理屈の通った話だった。
 何が言いたいかというと、まず、友達のいない人間は『他人と過ごす時間』というものが人よりも少なく、その分時間の余裕がある。
 時間の余裕ができると、今度は『では、教養でもつけようか』という気分になる。
 そこで読書だ。世界の名著を読むなら今だと思い、わたしは図書館に通うようになった。
 そしてたくさんの本を読むうち、孤独には、本当に読書がしみると実感する。
 だって、どんなに良い本を見つけたところで、直接本の感想を話す相手すら自分にはいないのだと、何度も何度も痛感する羽目になるのだから。


 だけど、それはある日突然終わった。
 紗雪が現れたので、わたしは本の感想を話す相手ができてしまった。
 それは紗雪にとっても同じだった。
 だからわたしたちは、思った以上にそれに夢中になったのだ。


「自分なりに努力はしてきたんだけど、いつも周りに馴染めないで、最後は一人になっちゃうの。
 だから、自分は、実は人間じゃないのかもとか思ってさ。
 こういう本が好きになっちゃった」

 わたし、もとい、わたしたちが読むのは、見事に怪物の出てくる作品ばかりだった。
 様々な理由から周囲とは違う容姿や考え方に育ち、孤立してしまう存在。
 もちろん、いつも怪物側が被害者とは限らない。そうなって自然と思える怪物もいる。
 だけどわたしたちは、どの怪物キャラクターにも等しく共感した。
 その姿が、自分達によく似ていたからだ。

「わかる。その気持ち。
 実際、人気者の人間キャラより、ひとりぼっちの化け物キャラの気持ちの方が、よっぽど理解できるの」

 そう言って笑いながら、学校で誰とも仲良くしないせいで暗い子、冷たい子だと思われている紗雪は、わたしに別の面白い本を教えてくれた。
 あくまでわたしとは読書仲間として親しむ、淡白な関係を望んでいるのかなと思っていたら、なんでもない日に突然贈り物をくれたりもした。

「お金余ってたから」

 紗雪はどうでもよさそうにそう言っていたけど、この前は『家が厳しいからお金は最低限しか持たせてもらえないし、高校生のうちはアルバイトも禁止されている』と言ってなかったか。
 しかも、今渡してくれたこれは、わたしがこの前SNSで見て『かわいい』と言ったものではなかったか。

 紗雪の優しさは不器用で唐突だ。
 お礼を言えば鬱陶しそうにし、かと言って無言で笑顔でいると、居心地が悪そうに睨んだり蹴ったりしてくる。
 その時も嬉しかったので、思わず箱から出さずに部屋に飾ったら怒られた。
 でも今も飾っている。


「これ、まだここに置いてたの? 早く箱から出して使いなよ……」

 そう言われながら、ベッドから見える位置に置いている。

「宝物だからいつも見えるところに置いておきたいんだよね。
 あれ、ありがとうね。
 わたしの誕生日もう過ぎちゃってるって知ったから、急にプレゼントしてくれたんでしょう」
「ちがうよ。友達のいない私は、同じく友達のいないおねーさんを哀れんでるの。
 だからたまたま見つけたものを気まぐれに贈っただけ」
「それ、同病相憐れむっていうんだよ」
「ちーがーう。そんな綺麗なものじゃない。だから期待しないで」

 紗雪はこの期に及んで、わたしに対して、わざと難しい、あるいは冷たい言い方をして距離を取ろうとしているように思える。
 今日だっておろおろと、身体によさそうなものがいろいろ入ったスーパーの袋を提げてやってきたくせに『自分が食べたかったから買ってきただけ』と譲らない。
 だけどわたしはそんな紗雪がいとおしい。
 怪物に共感しすぎるほど共感するわたしたちは、つまりほぼ怪物に等しいお互いの気持ちもよくわかるのだ。


「……ねぇ、おねーさんの具合悪い理由って、うつるやつ?」
「ううん。貧血とか低血圧とか、自律神経失調症とか、そっち系」
「そー……」

 紗雪はそれだけ言うと、さっきからまるで進んでいない本へ視線を戻す。
 そんな彼女は周囲から薄情な子と噂されていたが、対するわたしは、周囲から分別のある女だと認識されていた。
 しかし、これは薄情な子がすることだろうか。
 紗雪は不愛想かと思えば、いつも不安げにこちらを振り向いて、不慣れな手つきで大切にしてくれる。
 また裏切られることを恐れながら、どうにか気持ちを伝えようとしてくれる。
 紗雪はいつか『もう誰にも期待したくない』と言った。
 その気持ちはとてもわかる。
 相手と一緒に過ごした時間の分だけ、心を砕いた分だけ、まったく期待せずにいるというのは難しくなるし、誰だって仲良くなった以上は長く愛されたい。
 それが難しいのなら、いっそ一人でいようというのも合理的に思える。
 でも、わたしには別に期待してくれて構わないのだ。
 少なくともわたしはあなたを裏切ったり、突然ひとりぼっちにしたりはしない。
 なぜなら、あなたが思う以上に、わたしはあなたを必要としているし、あとそれから、積極的に誰かを傷つけようとする元気もない。わたしも結構疲れているのだ。紗雪と同様に。
 だから本当は寄り添いたいし、今みたいに身体の調子が悪い時は、甘えさせてほしくなるのだ。


「おいでよ」

 だからわしは、すぐそばにいるのに、ずっとこっちを見ているくせに、なかなかどうして近づいてこない紗雪に声をかけてみる。
 果たしてこれは、分別のある大人の女性がすることだろうか。
 とりあえずわたしには、わからない。
 わからないけど、せっかく知り合ってしまった孤独な化け物同士、今は二人で幸せになりたい。
 紗雪がどう答えるのか、知りたくてたまらない。


「一緒に手を繋いで寝てほしいな。でないと淋しくて泣きそう」
「そう」

 長くて短い沈黙が流れる。
 わたしは目を閉じ、それから、少しだけベッドの壁側にずれてみる。

「しかたないね。しょうがないから……言う通りにしてあげる」

 ゆっくり近づく紗雪の髪の毛からは、やわらかい蜂蜜の香りがした。


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